彼女の目に、俺はどう映っているのだろう





過ちを懺悔する意味





俺たち軍人にとって軍本部の命令は絶対であり、それが正しいかどうかなんて考える余地はない。
少なくとも俺はそう思う。


『―――撃墜の許可を』


共に追撃に出た同僚の言葉はとても冷淡で、だがそこに迷いはなかった。
彼は―――アスラン・ザラは裏切り者だと。
そして、それに助力したメイリン・ホークも同罪だと。

軍を、議長を裏切った“敵”なのだと。

レイは、俺に対してそう諭した。
まるでそれだけが真実であるかのように。

どうしてこんなことに
なんであんたが
なんで彼女が

浮かぶのはそんなことばかりで。
それらの思いは理論をなさず、考えるということとは程遠いものだった。

結局―――


俺は、議長に従うしかなくて。
裏切りなんてことを犯した彼が悪いのだと。


討った。





そのとき、そこに一緒にいた彼女のことまで、あまり頭が回っていなかったのだ。

討ったと実感した途端にその存在が大きく膨らんで。
どうしようとか考えても仕方ないけれど。
なんで、こんなことになったんだろうって。

それだけ。

俺は任務を果たして戻ってきた。
今までもそうしてこの艦に戻ってきて、そのたびにクルーは讃辞をくれた。

これまで討ってきたのは紛うことなき“敵”だったから。

けれど今回は違う。

昨日まで、さっきまで


仲間、だった。


それがいきなり敵だといわれて。
はいそうですか、と納得できるような人間ではない。

だから、俺が戻ってきても誰も何も言わなかった。
皆の視線だけが痛いくらいに語りかけてきて。
俺はその場にいられなかった。いる必要もなかった。


そして部屋に戻る途中で―――彼女の、肉親に。
姉である彼女に、会って。

誰よりも困惑した視線で俺を射抜いて、そこにとどまった。


でも俺は、立ち止まるわけにはいかないから。

彼女の横を過ぎるその瞬間に、一言だけ。


「―――…ごめん」


どこか虚ろだった彼女の、息を呑む声が聞える。
彼女が俺の方に振り返ったのがわかって、俺は反射的に足を止めた。

動けない。

彼女の悲しみがわかる。
俺だって大切な人を失ったから。

そんな思いをしたくないと、軍に入ったはずだった。
そして、今ここに、俺と同じ悲しみに暮れる人がいる。

俺の手によって


「…っ、ぁ…っ」


彼女は、泣いている。

背にかかる重みは、彼女の想い。
謝ってどうにかなるものではない。ルナマリアもそんなことは望んでいない。
彼女は、責める対象を持たない。
故に何にも縋れない。

目の前で震える肩を支える力をこの腕は持たない。

それでも、そうせずにはいられなくて。

足りない何かを埋めるように、俺は彼女を抱きしめた。




もう、何も考えたくない。


いろいろなことが脳内を駆け巡る。
手元に残っているのは妹の携帯電話。


何も考えられない。


これでよかったかどうかなんてわからない。
どうすればよかったかなんて、もっとわからない。



―――何も考えない。



これ以上、なくしたくないだけ。










そのために、俺は討つ






敵、を
















++++++++++++++++


それが俺の懺悔















 ...FIN





































終わりとは,このようにあっけないものだろうか。



泣けない理由



さっきまで,目の前に戦場があった。
自分は…一体何のために戦っていたのだろう。


ここは,エターナル。
怪我の治療をしろ,と。
アスランが無理やり俺とルナマリアをこの艦に収容した。

「…悪く思わないでくれ,シン」

ルナマリアとメイリンを,きちんと会わせてやりたいんだ―――…
アスランは,小さくそう言った。

「俺は大丈夫なんで…どっか独りになりたいんですけど」

敵艦ともいえるこの場所で一人になることなどできるはずもないと思ったが,
アスランの答えは意外にもあっさりしていた。

「…わかった。
 そこのエレベーターで最上階に上がれば展望室がある」

「…どうも」






これが『終わり』というものなのか。
戦争が終わるというのは,こうも現実味のないことなのだろうか。

さっきまで,確かに戦争はそこにあったのに。


展望室へと進む通路の先から,人影が出てきた。
オーブの軍服を着ている。
艦の人間だろうか。

みつかったら,めんどうかもしれない。

そう思いながら,その影を見ていた。

距離はそう遠くない。
なんとなく風貌が読み取れる。


「…」


既視感を覚える。



――― そうだ あいつ。



「(あのときオーブで会った)」



彼は,窓の外を見ながらひどく深刻そうな顔をしている。
軍人だったのか,彼は。
とてもそんなふうには見えなかったけど。

なんとなく,近付きたいと思った。
空間を漂う。


そして彼は,聞えるか聞えないかくらいの小さな声で,こう言った。









「…レイ」


















終わりなんてこんなものだ。
結局また,彼を救うことは出来なかった。

あの,きれいな少年――レイと呼ばれていた。

彼はあのラウ・ル・クルーゼのクローンなのだと言っていた。


自分の存在は,このような不幸しか招かないものなのか。

レイは…泣いていた。


『明日が』


レイの明日は,どんな一日だったのだろう。



彼は,幸せだっただろうか。
















「…レイ」



















ふざけるな,と。
思った瞬間には彼の腕を掴んでいた。



「あんた…っ」

「っ,!?」



己の思考に堕ちていたキラは,近くの人の気配など感じていなかった。

突然の衝撃に身体が強張る。


「なんで,なんで…! レイ…っ」


僅かに滲む視界も厭わず,シンはキラを壁に強く押し付けた。
慣性で,二人の身体が宙に浮く。


「なんで,あんたは…っ,いつも,俺の大切な人を守ってくれないんだよ…!」


―――見たことある少年。
艦の人間ではない。ザフトのパイロットスーツを着ている。
さっきアスランが言っていた…彼は。

あのときの彼は。

軍人,だったのか。


そう―――…名前は



「シ,ン…? きみ,あのとき慰霊碑の……きみが」

「呼ぶな…!」


シンは,キラに怒りをぶつけた。


「いつもいつもいつも! あんたのせいで…っ」


家族だけでなく,友人まで。
どうして彼なのだろう。

あの日見た海も花も,確かにきれいだったのに。


「…うん」

「…っ……,」


シンが,泣いている。
その姿を羨ましいと思う。

僕はもう,泣き方を忘れてしまった。


「泣いてほしく,ない…の,かなぁ……」


こんなときに,なにを意味のわからない事を―――
苛立って見た先の顔は,嗤っていた。

その切なさに魅入られる。


「こんな僕に,誰も泣いてほしくない…そんな資格ないから… だから僕は,泣けないのかな」


こんな笑顔,初めて見た。


「…」

「ねぇ…シン……」


愛しさに焦がれてしまいそう。




「僕のぶんまで,泣いてくれない? …お願い……」




この腕に,彼の魂まで閉じ込めて。









シンは,赦すように泣いた。




















 ...FIN






































委員会なんて何でもいいなんて思ってたけど。

俺はこのときほど、自分の選択を正しいと思えたことはない。




はじまりの日



「ぅ、わあっ」

なんとなく選んだ図書委員。
委員会なんてなんでもよかったし、楽そうだったからこれにしたんだけど。
最初の委員会で書架整理担当になった俺、シン・アスカは、図書館の奥の第1書庫で運命の出逢いを果たした。

「ちょ、大丈夫ですかヤマト先輩っ」

俺が通うこの高校には第3までの書庫があり、それぞれに2人ずつ整理担当者が配備されている。
当番は2週交代制だった。
今日から約半月、俺はこの第1書庫の書架整理になっていた。

「ぃたた…」

そして。
俺と一緒にこの書庫を担当するのは。

「なんで先に始めてるんですか、もう」

1級上の、キラ・ヤマトという先輩だった。
茶色い髪は見るからにさらさらで、大きな菫色の瞳は今にも零れ落ちそうだ。
多くの女子から、「可愛い」と評判の人物だった。

「…君が、シン・アスカくん…?」

本が落ちてきた箇所を摩りながら、先輩はそこで初めて俺の顔を視界に入れた。

「…っ」
「アスカくん?」

女子の意見に賛成。

「ぁ、あ、はいそうです。シン、シン・アスカです」
「僕はキラ・ヤマト。2週間よろしくね」


うまくやっていけそうだと、このときは確かにそう思った。












「……」


まただ。


「……先輩?起きてください。書庫閉めますよ」

肩を軽く揺さぶると、重たそうな瞼が持ち上がる。

「っ、ごめ…!」
「別にいいですから。ほら、帰りますよ、立ってください」

担当開始3日目。
こうして起こすのも3度目。

「ごめんね、アスカくん」
「…そんな顔しないで下さいよ。別に気にしてません」

縋るような瞳で言われたら、なんだかこちらが悪いことをしているような気分になってしまう。





「ほら、帰りますよ」
「、!」

勢いで彼の手首を掴んでしまって、しまったと思ったけれど、なんとなく放したくなかったのでそのまま引っ張っていった。

(細い腕…)

女の子のように柔らかくはないけれど、男にしては華奢な腕。

守って、あげたくなるような。


(…って、俺、まだ会って3日しか経ってない相手に何考えてんだ)

狭い書庫を出たところでさりげなく腕を放し、扉の鍵をかけた。
かしゃん、という音がやけに響く。

なにをこんなにドキドキしてるんだろう、俺は。

「…じゃあ、先輩、また明日」
「うん、…ばいばい」


俺は、何を。













金曜日。
あっという間に、当番も半分のところまで来てしまった。

「…シン?」

彼の俺を呼ぶ呼び方が変わったのは、昨日の帰り際。

「なんですか?」
「僕、一人暮らしなんだけど」
「…はぁ」

いきなり、何を言い出すのかと思えば。

「俺もそうですけど。どうかしたんですか」

彼は、言い難そうにしながらこちらを見ている。
いったい何なのだろう。

「先輩?」
「あー…のさ、今日の夜とか、明日とか…暇?」
「ひま…ですけど」

話の流れを先読みしてしまって、勝手に心拍数が上がる。


「このあと、うちに泊まりに来ない?ちょっと、相談したいことがあるんだ」


泊まり…

………

泊ま り ?


「えぇ!?い、いいんですか?…ってか、ここじゃ話せないんですか?」
「家じゃないとダメなんだ。…来れる?あ、着替えとかは…」
「ここから俺の家近いんで、取りに帰りますよ」

なんだか、誘う彼の姿がとても頼りなげで、何かに怯えているように見えて。

「うちによってから先輩の家行きましょう?それでいいですか?」
「うんっ、ありがとう…!」


彼の家に行くということに対する動悸を無視して、俺は最大限に優しく笑った。









「あがって」

彼の部屋はいわゆる1ルームで、そんなに広くはないけれども、物が少ないおかげでとてもすっきりしているように見えた。

「おじゃましまーす…」

それでも、生活感があることに安心する。
雑誌が置いてあったり、台所を使った形跡があったり。

「紅茶でいい?」
「あ、はい、ありがとうございます」

出された紅茶を飲んで、テレビを観ながら2人でぼーっとして。
なんだか不思議な時間だ。外はもう暗い。
と、そこへ、玄関の郵便受けに何かが入れられる音がした。

「…っ」

チラシかなにかだろうと思ったが、目の前の人物の反応がどこかおかしい。

「先輩?大丈…」


―――かたん

―――かたん


――ーかたん


「…?」

等間隔に投げ入れられる何か。
悪戯と思い、シンが犯人の顔を見てやろうと立とうとした瞬間。


―――がちゃがちゃがちゃっ


「!?」

鍵の閉まっている扉を、無理やり開けようとしている。

(もしかして、相談って)

これは、随分とたちの悪い悪戯だ。

「先ぱ…」
「―――…シンっ」

彼は震えていた。
俺に縋りついて、必死に耐えていた。

「いつから、ですか?こーゆうことが始まったのは」

安心してほしくて、彼の背中にゆっくりと腕を回す。
緩く摩ってやると、少しだけ肩の力が抜けた。

「新学期、始まってから…」
「1ヶ月も…!?」

彼が言うには、入れられているのも白紙のカードで、玄関を実際に開けられたこともないらしく、これといった実害がないので誰に相談すれば良いかわからなかったそうだ。

「夜も、なかなか寝れなくて…けど僕、親しい友達とかいないからどうしていいかわかんなくて…っ」

腕の中で、そう告白する彼を、やっぱり放っておけない。

「それで、俺に…?」

確かに、5日間それなりに話もしたし、少しは仲良くなった。

「君なら、なんとなく…聞いてくれると思って」

書庫整理なんて、そんなに忙しいものじゃない。返却された本を戻し、他の本の配置が乱れていないかをチェックする程度だ。
何も仕事がない時間は、書庫の中で雑談したり、課題したり。

「あ…もしかして、書庫で寝てたのって、これの所為で睡眠不足だから?」
「…ん」

あぁ、もう、本当に。


「シ、ン?」


腕に込めた力を強くすると、彼は少しだけ身じろいだ。

「俺…あんたのこと、放っておけない」
「、っ」

この気持ちは、何なんだろう。



ただ、漠然と。


俺が、守ってやりたいと、そう思った。









それが、始まり。











 ...FIN






































わがままに恋する。



夏の日



夏。
放課後の学校。

外では、運動部が炎天下のグラウンドで日々の練習をこなしている。
大会が近い部もあるようで、そこはいつもより活気付いていた。

この教室には、誰もいないけれど。

偶然委員会が同じになって、担当も一緒になったこの先輩といわゆる恋人関係になったのは、そんなに前のことではない。

「あつーい」

それは、この時期であれば無意識について出てくるセリフだった。

「だったら、図書館行きましょうよ。俺も暑い」
「人がいるからやだ」

窓際の、日が当たる席なのだから暑くて当たり前。
それでも、そこが自分の席だから、といって動こうとしないキラに、シンは小さく溜息をついた。
2人きりでいたいのだと、そう思ってくれているのはとても嬉しい。
キラが直接口に出したわけではないけれど、彼がそんなことを言うとは考えられないし。
それでも、言葉の端々からそういった想いを汲み取ることができるので、シンはそれほど不満に思ってはいなかった。

「外で部活やってる人はすごいよね。僕、絶っ対無理」
「でしょうね」

「……」

即答した内容にむっとしたらしく、キラはシンを睨みつけた。
ここで彼の機嫌を損ねても、なんの得にもならない。
せっかくの2人きりの時間なのだから、楽しく過ごしたいというのがシンの考えだった。

「…もう、そんな顔しないでくださいよ。
 そんなに暑いなら、何か飲みます?俺、自販行って買ってきますよ」

シンの提案に、キラは憮然としつつも、うーん…と考え始めた。

「カキ氷」
「…、は?」

キラの要望は、学校内でかなえられるものではない。

「だーかーら、カキ氷!そこのお店まで行って買ってきてよっ」

どうやら、暑さと先ほどの失言のおかげで、シンが思っていたよりもキラはご機嫌斜めらしかった。
ここは従っておこう。

「…はぁ、わかりましたよ。キラさん、何味がいい?」
「いちごー」
「了解。じゃ、待っててくださいね」




10分もせずに、シンは教室に戻ってきた。いちごとオレンジのカキ氷を持って。

「はい」
「ありがとー」

シンはキラの前の席の椅子を借り、向かい合ってカキ氷を食べ始めた。

「カキ氷ってさぁ、溶けてきたのを飲むのがおいしいよね」
「最後の方にね」

わかるわかる、などと他愛もない話をしながら笑っている時間がとても楽しかった。

「おいしかったー。手、洗って来るね」

食べ終わってすぐにそう言って席を立とうとするキラに、シンの中で一つの悪戯心が芽生える。

「待って、キラさん。 手、出して?」
「べたべたしてるよ?」

躊躇うキラに、いいから、といって強引にその手を取った。

「…っ、シ」
「甘い、ね」

今、この掌に触れたその舌で、シンは自分の唇をなぞる。
ぞくり、と、背筋に何かが走った。

「ん…ッ」

柔らかく引き寄せられて、それが当然のことのように口を塞がれる。
甘い蜜に塗れた口内は、2人の行為をいつものそれより深くした。
がたん、と椅子が鳴る。同時に、キラはそこに再び腰を下ろしてしまった。

「立てなくなった?」

にやり、と浮かべた笑みは間違いなく男のもので、その瞳に揺れる感情に気付かないわけがない。

「もう…っ、何に欲情したのさっ」

真っ赤な顔をして、至近距離にある年下の恋人を睨みつけた。

「俺、キラさんが傍にいれば、それだけでアンタに欲情できる自信あるよ」

言えば、年上の彼はますますその頬を上気させて。

「ば…っ、バッカじゃないの!?」

照れ隠しにそんなことを言っても、何の効果もないのに。

「何とでも。キラさん、かわいい……」

キラの暴言をさらっと流し、シンは先の行為を催促する。

「ね、いい?俺、我慢できないんですけど」
「ちょ、ここ教室…っ」

彼は、自分のカッターシャツを脱いで床に広げた。
今日のベッドは随分と硬い。

「気休め」
「もう…! 勝手にすれば…っ」

乱暴に答えながら、肯定のキスを仕掛けてくる。

「…、ぁっ、シン…っ」

その瞳が自分を求めて濡れていることを喜びながら、シンはキラのシャツに手をかけた。






そんな、夏の夕方。


 ...FIN






































任務に出た先で、丸一日の休暇をもらって。
特にすることもなかったから、許可をもらって外に出た。

海岸線をバイクで走ってもよかったけど、なんだか人ごみに紛れたいような気もして。
市街地へと、向かうことにした。

(結構にぎやかな街だな…)

商店の並ぶ方へ進んで、道を彩る特産品を見るともなしに眺める。
特に買いたいものがあるわけでもないし、買ったところで軍人の自分にはあまり意味もなかった。

だから、そこで、何かを買うことになるなんて微塵も思っていなかった。



あなたにささげるあいのうた



「シン・アスカ、只今戻りました」

目の前には、自分を呼び出した上司が優雅に佇んでいる。

いつ見ても、とても軍人だとは思えない。
白い肌、華奢な身体、中世的な顔立ち。
栗色の髪も菫色の瞳も、すべてが神秘的で魅惑的で、傍にいるときはその色香に飲み込まれないよう必死だ。

「おかえり。街の様子はどうだった?」
「豊かな街でしたよ。みんな楽しそうで」

後ろ手に持っているものに気付かれないように簡単な報告をすると、彼は嬉しそうに微笑んで「そう、よかった」と言った。

「隊長も、行かれてはどうですか?息抜きに」
「時間があるならね、僕もそうしたいけど」

苦笑しながらそう言う姿は、明らかに日頃の任務に疲労しきっている。
現在の微妙な緊張状態の中では、それも仕方のないことなのだろうか。

―――それでも、彼にも少しだけ、あの街のカケラを。

「…ね、キラさん」

名前で呼ぶことには、ここでは大きな意味を含んでいて。

「仕事中、だよ」
「少しだけ…だから」

そういうと、目の前の上司は「しょうがないな、」と溜息をついて肩の力を抜いた。
キラの変化をみつけて、シンが嬉しそうに近付いてくる。

「キラさん、手、出して」
「…?」

きょとん、としながらも、キラはシンの言う通りに右手を差し出す。
その上に、シンは隠していたものをそっと置いた。

「…赤い、石…?なにこれ」
「市場でみつけたんだ。この辺で取れる鉱物なんだって」

紐に通してペンダントにできるよう加工してあるその石は、キラの手の中で深紅に輝いていた。
その石を再び手にとって、シンは黒の革紐を通してやる。

「俺の、目の色。身につけててよ」

キラの椅子の肘掛に腰掛けて、シンはキラの耳元でそう囁いた。

「…っ」

その声に、体中の血液が顔に集まっているのではないかと思うほど恥ずかしくなる。
思わずシンの顔を見てしまうと、言った本人もかなり赤くなっていた。

「…だめ、ですか?」
「そんなことない…!」

不安げに聞けば、キラは即座に否定してきた。
その反応がとても嬉しい。

「ほんとに!?ね、じゃあ、俺がつけてあげる」
「え、ぁ」

一気に舞い上がったシンは、キラの返事も聞かずにペンダントをキラの首に回す。

「…はい、できた」

胸元で、ルビーのような赤い石が煌めく。

「ありがとう、シン。うれしい」
「よかった」

頬を染めながら、2人で微笑みあう。
そんな瞬間がくすぐったくも心地よかった。

キラが、石を持ち上げて軽く口に当てる。


「…今度は、僕が僕の瞳の色の石をプレゼントするね」


「っ、…」

キラの行動と言葉に、シンは我慢できずに本物の紫にキスをした。

「シ、ン」
「…唇にも、していいですか」

聞かないでよ、と言いながら、キラは自分からシンを引き寄せ。

「…っ」

軽く、触れるだけのキスを送った。

「ほら、仕事戻るよっ」

照れ隠しに、彼は職権を翳す。

「わかりました。…では、隊長、失礼します」

部屋から出る瞬間、彼が贈り物の石を大切そうに懐に仕舞うのが見えた。





たまには、こんな意味のない贈り物もいいかなって。
あなたならきっと、喜んでくれるから。

いつでもどこでも、あなたのことを考えてるんだよって。
あなたならきっと、わかってくれるから。


そんな、俺の。

ありったけのあいを、あなたへ。





 ...FIN






































学校も終わって、家に帰って。
自分の部屋に戻った俺は、その辺に散らかってた雑誌のひとつを手にとって夕飯の時間になるのを待っていた。

と、そこへ。



ナイトメア?



2つ年上の兄、キラがノックもなしに部屋に入ってきたかと思えば、そのまま隣りに腰を下ろしてこちらへ思い切り体重を預けてきた。

(重い、んだけど…)

座ったきり、彼は何も言わない。

「なに、どーしたの」

「・・・いーじゃん別に」

こちらから訊いてみたものの、理由を答える気はないらしい。

(ま、いいけどね)

にいさんといるのは嫌いじゃない。
俺が生きてきた中で一番長い時間を共にしているのは間違いなくこの人だし、俺はこの人以上に好きだと思える相手(変な意味じゃなく)に出会ったことも無い。

(それに、だいたい理由わかるし)




この人がこんなふうにこの部屋に来るのも初めてではない。
前科をいくつか考えてみて、この時間帯であることを考慮すれば、ほぼ間違いない仮説にたどり着いた。

「…今度は何が出てきたんだよ」

うたた寝か何かしていて、怖い夢でも見たのだろう。

「―――………なんかうにょうにょしたへんなやつ」

ほらね、やっぱり。
俺は心の中で小さく溜息をつく。
しかも今日の夢に出てきたヤツはにいさんが一番苦手そうなものだった。
前に顕微鏡でアメーバを観察したときなんて、顔面蒼白だった。

「で、そいつがどーしたの」

俺は別にそーゆうの怖くないし、ってかむしろ面白いし。
けどキラは普通にこわがっているので、俺は静かに話を聞いてやることにした。

「だってさぁ!?追いかけて来るんだよ!?あんな形もはっきりしないわけわかんない物体が!」



素っ気ない俺が気に食わなかったのか、キラは自分の夢に出てきた化け物について力説し始めた。

「しかもなんかいろいろ飲み込んでるの!」

拳を握り締めて語るにいさんは、年上とは思えないほど可愛い。
それは周囲からも言われていることで、俺はこの、多くの人に愛される兄を誇りに思っていた。

「…俺はにいさんのその想像力の方がすごいと思うけど」

今だ語り続けるにいさんに苦笑すると、彼は頬を膨らませて再びもたれかかってきた。

彼が言いたいのは、その化け物がどんなに恐ろしかったか、ということではないのだ。
それでも、自分から言うということを彼は決してしない。
いつだったか、それは兄の威厳だとか何とか、見栄を張ったようなことを言っていた。

「…で?」

だから、こっちから聞いてやるんだ。
でも、やっぱりそこから先は彼の口から聞きたい。



「…だから。 こわいから、今日は一緒に寝よ」









 ...FIN






































誕生日といえば?




甘いお菓子をどうぞ -01-



「やっぱケーキ?」

「…なんの話だよ」


昼休みの教室。
周りには、課題をやったり談笑したり、各々好きなことをするクラスメイト。
キラは、食事中のアスランに、思いついたことをそのまま口にした。
幼馴染み歴14年、そろそろこの思考回路には諦めの境地だ。

今現在、夏休みといわれる期間。
それでもこの学校は進学校らしく夏期講習の真っ最中で、それは休業最終日の今日でもかわらなかった。
キラとアスランが少しだけ余裕なのは、もう既にやるべき課題も予習も終えているからだ。

アスランの疑問を当然とでも言うように、キラは平然と答えた。

「明日、シンの誕生日じゃん」


そう、なのだ。

9月1日。
俺たちにとって、この日は新学期の始まりでもなんでもなく。


アスランは、数年前に自分の弟となったシンの顔を思い浮かべた。








遠縁にあたるシン・アスカがアスランの家に来たのは、まだアスランたちが10歳の頃だった。

『今日からこの家の子どもになるの。アスラン、仲良くしてね』

母に連れられて来たその少年は、黒髪に紅の瞳という、とても印象的な容貌だった。
シン、と呼ばれた少年は、アスランを見てぺこりと頭を下げただけで、何も言わなかった。

今現在の、何かあればすぐにつっかかってきたり頼りにしてきたりする彼からは想像も出来ない。


「アスラーン?聞いてるの?僕の話」


何も言わないアスランに痺れを切らして、キラはアスランの目の前に身を乗り出した。

「ぅ、わっ」

予想以上に近くにあったキラの顔に驚いて、アスランは思い切り仰け反った。
その反応を見て、キラが僅かに機嫌を悪くする。

「…その態度失礼」

キラが不機嫌なのは、俺がどうだというよりも、シンに関する話を蔑ろに聞くことに対してだ。

「わ、悪い。 …で、ケーキがどうしたっていうんだ。毎年うちの母が焼いているだろう」
「そうなんだよねぇ…」

うーん、と、そこで考え込むキラによくない予感がして、アスランは先手を打った。

「というか…お前、手作りなんて考えるな」
「なんで」

別に、キラは料理が出来ないわけではない。もちろん俺も。
だがしかし。


「…俺たちがシン抜きでちゃんとケーキが作れるとは思えない」


「……」


自分で言って空しくなるけれども。
事実、シンは料理がとても得意なのだ。
この前なんか、『特製カレー』と称して、たかがカレーライス(されどカレーライス)を何時間もかけて作り上げた。
ちなみに、玉葱を炒めるだけで1時間だ。
骨つきの鶏肉を使うのも彼なりのこだわりらしかった。
にんじんが嫌いなキラの為に、摩り下ろして香りを消し、ジャガイモは大きくごろごろと。
もちろんルーも手製だ。
出来上がったカレーは、本当にただの高校生が作ったものなのかと思えるほど美味しかった。
休みの日にはそうやって、得意料理を家族やキラに振舞うのがシンの趣味だった。

つまり。

キラやアスランが調理台の前に立つときには、必ず監督がついているのだ。
したがって、ふたりとも料理で大きな失敗などは未然に防がれていた。

「…でも、うん」

しかし、何かを決意してしまったキラの表情に、アスランは焦燥を憶える。


「やっぱりつくろう!」


こうなったキラを、止められないのはわかっている。
わかっているけれど。

「…キラ、本気?」
「あたりまえー」

予測済みの答えを聞いて、アスランはキラに気付かれないように溜息をついた。











  ...to be continued   >>>NEXT






































全員参加の課外は午前で終わり。
午後に、一つだけ選択の科目があったので、それを2人で受けてから早速買い物へと出かけた。寄り道だ。

「さて。まずは本屋さん!」



甘いお菓子をどうぞ -02-



俄然やる気のキラは、アスランの数歩先を行く。
どうやらレシピを調べるところから始めるらしく、キラは真っ先に本屋の料理コーナーを目指した。

「簡単なやつがいいかな、やっぱ。おいしいの作りたいし…」
「だな。シンプルで、見栄えのするもので何かないのか」

ぺらぺらと、男2人でお菓子の本を捲りながら思案する姿は、周囲から少しだけ視線を集めた。

「うーん…これは?ガトーショコラ」
「あぁ、一度作ったな、これ」

もちろんシンが。
以前、キラが突然チョコケーキが食べたいと言い出したから。

「これなら、ケーキ自体はそんな特別難しくなさそうだし…ほら、生クリームとかミントとかフルーツで飾り付けするだけでかなり綺麗に見えるよ」
「本当に難しくないのか?」

確認するように、アスランも本を覗く。
確かに、手順に左程特殊な工程はなさそうだが。

お菓子作りそのものが難しいということをこいつはあまり考えていないのではないだろうか。

「よし、これにしようアスラン」
「…わかった」

結局ガトーショコラに決まった。
本当にちゃんと作れるのだろうか。

「この本買ってくるね」
「代金は、あとで材料と合わせて割り勘な」
「とーぜん!」

キラは、なんだかうきうきとした様子でレジに向かった。
シンの誕生日が、余程嬉しいらしい。

もちろん、自分も彼の誕生日を祝うのは嬉しい。
血の繋がった弟ではないといっても、かれこれ8年の付き合いだ。
シンのことは、本当の弟のように思っている。
彼も自分を慕ってくれているのがわかるし、キラともとても仲が良い。
俺たち3人は、家族以上で友達以上の幼馴染みだ。


「アスラーン?早く行くよー」

「…あぁ!今行く」















ちょっと大き目のスーパーへ行って、レシピにある材料の中で家にはなさそうなものをかごへと入れていく。

「グラニュー糖って、普通の砂糖と違うんだ?」
「あぁ…ほら、コーヒーとかに入れるさらさらしたやつだろ。溶けやすいんだ」
「なるほど」

そんなことをいいながら商品を見て廻る。

「僕の家で作ろうね。シン驚かせたいし」
「だな」

グラニュー糖や小麦粉、卵なんかは家にあるだろう。
そう考えて、2人は製菓用のチョコレートや果物の缶詰、生クリーム、バターなどを探した。

と、そこへ。

「アスラン、携帯鳴ってない?」

取り出してみるとそれは確かに着信を告げる振動をしていて、ディスプレイには件の人物の名前が表示されていた。

「…シン?どうした?」

他の客の邪魔にならないように足を止めて、キラはおとなしく電話が終わるのを待つ。

『あ、兄さん?今どこ?』

スーパーで買い物中、とはいえないので、アスランは適当に答える。

「キラと帰宅途中だが…どうかしたのか?」
『レイたちとちょっと寄り道して帰るから!夕飯いらないって、レノアさんに伝えといて』

電話越しに、彼の友達の談笑する声が聞えてくる。

「わかった。あまり遅くなるなよ」
『大丈夫だよ。じゃ!』

通話が終わったのを見計らって、キラが訊ねる。

「シン、なんだって?」
「ん、あぁ、レイたちと寄り道して帰るから夕飯はいらないんだと」
「ふぅん…」

だったらさぁ、と、キラが思いつきを口にした。

「僕の家じゃなくてアスランの家で作ろうよ」
「…なんで」

驚かせたいから、と言っていたのに。

「えーだってさぁ、持ってく手間が省けていいじゃん」
「お前…」

そーゆうことは面倒くさがるのかと、アスランは脱力した。

「もし早く帰ってきたりしたらどーするんだよ」
「大丈夫じゃない?そーゆうときっていつも結構遅いじゃんシン」
「…まぁ…そう、だが」

何をしているのかまでは知らないが、シンは「レイたちと」と言ったときには8時過ぎまで帰ってこないのが当たり前だ。
以前一度9時半を過ぎて母に怒られて以来は、9時までには帰ってくるようになった。

「…はぁ、わかったよ。お前の好きなようにしよう」
「早く買って帰ろー」

アスランが承諾するのが当たり前、とでも言うように、キラはすたすたとレジへと向かった。

「あいつには勝てない…」

お菓子の本のおいしそうなケーキを見ながら、アスランは溜息をついた。













  ...to be continued   >>>NEXT






































「さて、と。」



甘いお菓子をどうぞ -03-



帰宅したのは4時半過ぎくらいだった。
夕飯の支度を始めた母の後ろで、キラとアスランは買ってきた材料をテーブルに広げる。

「あんまり散らかさないでね」

母レノアの言葉に、アスランは曖昧に頷く。

「…善処します」

材料と道具がきちんと揃っていることを確かめ、キラがチョコレートを手にした。

「僕これするから、アスランはメレンゲ作って」
「…」

この作業にはかなりの根気が要るということをわかっていて、キラはこの作業を俺にさせるのか。

「…わかった」

承諾するしかないのは、幼い頃から変わらない弱みだ。

全卵を卵白と卵黄にわけ、あとで使う卵黄を小皿に移し、アスランは砂糖と一緒に卵白をひたすら泡立てた。
…はやくふわふわになってくれ。

一方キラは、包丁でチョコレートを刻み終わったようで、それらを大き目のボールに移し、バターを加えて湯煎にしている。
ボールの縁についたチョコを舐めるのを見たが、バターのおかげでおいしくなかったらしく、それからキラがつまみ食いをすることはなかった。

「…よし、溶けたかな。卵黄と混ぜて、次はー…小麦粉、と」

溶かしたチョコとバターをテーブルまで持ってきて、キラは卵黄と混ぜてから小麦粉の分量を量った。

「んで、これをチョコと混ぜてー」
「ぅわ、待てキラ!」
「っえ?」

いきなり大声を出したアスランに驚いて、キラは手を止める。

「バカ、小麦粉はふるってから入れるんだ!」
「…あ、ほんとだ」

あぶなかったー、などと暢気に言いながら、キラはボールの上にふるいをかざし、そこに小麦粉を入れてチョコと混ぜた。

「雪みたーい」

キラの言葉を聞きながら、アスランはメレンゲを泡立て続ける。
だいぶいい感じだがまだ少しやわらかい。

「ゴムベラで軽く混ぜて、…」





そこへ。




「なにやってんの?」






聞えてきたのは、いないはずの。


「「シン…っ」」


目の前に広がる光景は、明らかにお菓子作りの最中だ。
2人だけで作ってるなんてめずらしい。

「お、お前、レイたちと…」
「あー、なんかルナとメイリンが家の用事で都合悪くなっちゃって。…で、兄さんとキラさんは何やってんの」

やばい。
何がやばいって。

「キラさん…?」

シンにばれたことよりも。

キラが明らかにしょんぼりしていることだ。
余程、シンに驚いてもらいたかったらしい。

「あー、だから、その」

アスランは、何とか取り繕おうと一生懸命に喋った。

「明日、お前の誕生日だろう。だから、その…2人だけでちゃんとしたケーキを作って、お前を驚かせようとしてだな…」

シンは、アスランとキラの顔を交互に見ている。

「俺、の……って、ぅわっ」

急に襟首をつかまれて、シンはいきなりアスランに引き寄せられる。
そして、アスランはキラに聞えないように小声で言った。

「何で帰ってきたんだよ!」
「はぁ!?俺が悪いのかよっ」
「見てみろあのキラの顔!あいつがこーゆうイベント好きなの知ってるだろ…!」

確かに。

ちら、とシンはキラを見ながら思った。

「ってか、昔から思ってんだけど、何で兄さんはキラさんにそんなに弱いわけ?」
「それは…お前だって人のこと言えないだろ」
「ぅ…」

今度は2人でキラの様子を伺いながら、大きく溜息をついた。

「よし、俺が行く」
「シン?大丈夫か?」
「…たぶん」

返事は頼りないがきちんと考えはあるようで、シンは一歩一歩キラのもとへ近付いた。

「キラ、さん?」
「…驚かそうと思ってたのに」

キラの眉間には皺が寄っている。
可愛い顔が台無しだ。

「充分びっくりなんだけど」

まさか2人が俺に何か作ってくれるなんて思ってなかったし。
いつもは絶対振舞う側だから。

「シン」

キラは、やっとシンを見た。

「ってかさ、俺のお祝いなら、俺も混ぜてよ。一緒に作りたい」
「…!」

どうやら、シンの選んだ言葉は効果覿面らしかった。

「よし、んじゃさっさと作ろ。…あぁ、ガトーショコラ作ってるんだ」
「うん。アスランがメレンゲ作っててね、僕はチョコ担当」
「これなら簡単。…ほら兄さん!メレンゲやって!」

チョコレートが冷えて固まりかけていたので、結局はシンが手際よく済ませてしまったけれど、キラはずっと笑っていた。



「あーあ、あんま膨らまなかったねぇ」
「メレンゲ作ったのが兄さんだからねー」
「アスランのバカー」

出来上がったガトーショコラは、キラの目にはそう映った。

「お前ら…俺がいつまでも怒らないと思うなよ…?」

実際には、ガトーショコラは焼きあがる前に真ん中がくぼんでしまうので、見た目には膨らんでいないように見えてもそれでいいのだ。

アスランでさえ知っているそのことを、キラはともかくシンが知らないわけがない。

「冷蔵庫に入れとくね」
「あ、じゃあ俺生クリーム作るわ」

そう言って、シンは新しいボールと生クリーム、砂糖を用意する。
そして手には。

「…シン、なんだそれ」

「んー?見てわかんない?電動の泡だて器。」


「……」


へぇ、そんなのがあるだー、と、キラは暢気に感心しているが。

俺のあの苦労はなんだったんだ、と、アスランは本気で怒鳴りそうになった。















結局この日、キラは自宅に帰らずアスランたちの家に泊まることにした。
一度家に帰って明日の準備をして。

3人でシンの部屋に集まって、ラグの上に座って意味もないおしゃべり。

「でさー、そしたらレイが…」
「あー!それ僕も見た!」
「はぁ!?嘘だろう?」

学校のこと、友達のこと。
どうでもいいような話が、とても大切なことのように思えてくるから不思議だ。

「あ、もうすぐ12時だぞ」
「…なんか恥ずかしいんだけど」

アスランの言葉と共に、カウントダウンを3人で始める。


「5・4・3・2…」

そして、9月1日。


「シン、誕生日おめでとう!」
「おめでとう、シン」

「ありが、とう」

なんだかくすぐったい気持ちで、シンは感謝を口にする。



「俺、この家に来てよかった」


いつまでも、このまま3人一緒にはいられないとわかっているけれど。
それでもたまにこうやって、子どもの頃と同じような距離で話せたらいいと思う。

いつまでも、いつまでも。





朝起きてみんなで食べたケーキは甘くて、ちょっとだけ苦かった。












 ...FIN






































Subject:突然ですが

本文:シンに言わせたい台詞リレーやろう



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うさ:「俺…いっつもキラさんの事しか考えてません」

祈月:「好き…っていうか、大事なんだ、あんたが。何よりも。」

うさ:「そんなにアイツの事…気になるんですか」

祈月:「キラさん、今日は何が食べたい?」(リアルタイムに料理中だった)

うさ:「…ね、まずはキラさんから食べたいな…」
   (おかえり〜ごはんにする?お風呂にする?の方式で)

祈月:「…やっと会えた。ねぇ、早く帰りましょ?俺、早くキラさんと二人きりになりたい」

うさ:「俺…アンタのこと好き過ぎておかしくなりそう…」

祈月:「あ…のさ、キラさん。今日…いい、ですか?」(赤くなりながらも真剣に)

うさ:「電気…消さないで?キラさんの身体、もっと見てたいんです」

祈月:「俺の傍にいろよ!他に選択肢なんてないだろ…っ」

うさ:「…ッ、アンタが好きなだけだ!それの何がいけないんだよ…!!」

祈月:「俺だけ見て、聞いて、感じて。他にしてほしいことなんてないから」

うさ:「俺の事、好きって…言ってくれませんか?」

祈月:「あの、…俺といて、楽しい?いや、なんか…俺、舞い上がっちゃってて」(初デートシンキラ)

うさ:「アンタを…誰にも渡したくないんです」

祈月:「あんたを傷付けたこの腕で、俺はあんたを守るよ。…だから、俺を傷付けたその腕で、あんたも俺を守って。」

うさ:「可愛い、キラさん…」(最中)

祈月:「…ね、ちょうだい」(誘うとき)

うさ:「いつまで、なんて…そんな悲しいこと言わないで下さい。俺、キラさんとずっと一緒に居たいんです…」(自信なさげに俯いて)

祈月:「あんたが、俺の命だ。俺は俺のために、あんたを生かす」

うさ:「全くアンタって人は…!……まぁ、そんな所が可愛いって思う俺もどうかしてるけど…(ぼそり)」(とある方の受け売り)

祈月:「信じるかどうかはあんたの勝手だけど。俺が今あんたの傍にいるのは真実だ。…キラさんが、好きです」

うさ:「キラさんズルイ…こんなんじゃ、俺…もっと好きになるばっかじゃん…」





…いつか何かの役に立つと思いたい。